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小惑星探査機「はやぶさ2」におけるパリレンの重要な役割
2014年12月、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した小惑星探査機「はやぶさ2」が種子島宇宙センターから打ち上げられました。このミッションは小惑星「リュウグウ」に着陸してその表面および地下のサンプルを採取し、地球に持ち帰ることでした。
打ち上げに成功した「はやぶさ2」は3年半にわたる宇宙の旅を経て、2018年6月、1億8000万マイル(29万km)離れたリュウグウの軌道に到達しました。「はやぶさ2」は12マイル(20 km)離れた軌道から、リュウグウの表面を探査し、マッピングを行いました。2019年2月、初めての小惑星タッチダウンを行い、表面から直接サンプルを採取しました。その5か月後に2回目のタッチダウンを行い、小惑星深部の試料を採取するミッションに成功しました。小惑星の表面は、太陽系が誕生して以来、太陽の光にさらされ続けて風化していますが、深部のサンプルは原始のままであり、太陽系の起源についてさまざまなことがわかる貴重な試料データを含むことが期待されました。サンプルを収容したカプセルは2020年12月に地球に帰還しました。「はやぶさ2」は以降も太陽系外惑星の観測の拡張ミッションを続け、2031年には別の小惑星に到達する予定です。
小惑星探査機「はやぶさ2」の内部には、デジタルカメラとアナログカメラに使用される20の回路基板が搭載されています。この回路基板にはSCSパリレンコンフォーマルコーティングが適用されており、航行・探査中に受け続ける気圧による容赦のない環境ストレス、金属ウィスカー、打ち上げ時に生じるガス放出から保護されています。
宇宙に出た後とは異なり、最初の打ち上げ時と宇宙空間に出るまでの間は、急激な気圧変化が生じ、多くのコーティングに破壊的影響が生じる可能性があります。パリレンコーティングは真空中で気体として適用されるため、コーティング内には気泡が生じません。よって気体が漏れ出て通路を形成し故障の原因になることもありません。
鉛フリーはんだは含鉛はんだよりも環境に対して安全ですが、機械的・熱的ストレスにより金属ウィスカーを形成しやすいことが知られています。このウィスカーがエレクトロニクスシステムの信頼性低下の原因となることがあります。ウィスカーは通常、1ミリメートル以下の大きさですが、アーク放電や短絡、デブリ、汚染などを引き起こすことがあり、光学系やエレクトロニクスを阻害する可能性があります。鉛フリーはんだでウィスカーを確実に防止することが証明されている方法はありませんが、パリレンは金属ウィスカーの形成を抑制することが実証されています。パリレンは完全にコンフォーマルであり、基板の表面や側面および隅々まで均一なコーティング厚さを提供します。コーティングされた製品のすべての表面が均一に保護され、金属ウィスカーが抑制されるため、宇宙での用途には欠かせません。SCSパリレンCとパリレンHT®は、金属ウィスカー抑制効果だけでなく、航空宇宙業界においてコンポーネントの全体的な信頼性向上に成功しているため、メーカー各社から常に選択されています。
宇宙用途では、さまざまな気体に曝露することも問題を引き起こす可能性があります。この業界でガス放出として知られる現象は、材料から放出される気体がデリケートなエレクトロニクス部品を覆い、劣化や故障を引き起こすものです。そのため、宇宙で利用されるコーティングは基板を保護するだけではなく、他の機器やコンポーネントを誤って損傷してしまう危険性も回避しなければなりません。つまり、使用するコーティングは、ガス放出が少ない材料として分類されるものでなければなりません。
宇宙用途における材料の好適性判定は、米国のジェット推進研究所で実施されており、その結果はoutgassing.nasa.govで公開されています。低ガス放出材料として分類されるためには、試験結果が2つの基準を満たすこと、すなわち合計重量減少(TML)が1.0%以下、かつ回収された揮発成分物質(CVCM)が0.10%以下でなければなりません。パリレンC、専有技術の密着促進システム(AdPro Plus®、AdPro Poly®)を併用したパリレンC、およびパリレンHTは、試験の結果、これらの条件を優に下回り、低ガス放出材料としての使用が確認されています。
SCSは、パリレンコンフォーマルコーティングが「はやぶさ2」での使用に選ばれ、小惑星リュウグウの探査にその役割を果たせたことを誇りに思っています。低ガス放出材料であるパリレンは、気圧変化の中でもコンポーネントを保護し、同時に、堅牢な特性と利点により金属ウィスカーを抑制することにより、お客様の用途にベネフィットをもたらします。加えて、超軽量で均一かつピンホールフリーのパリレンコーティングは、優れたバリア特性を提供し、苛酷な環境下でも最大限の性能を実現します。パリレンコンフォーマルコーティングについての詳細や、宇宙航空向けコンポーネントをいかに保護できるかについての詳細は、Tim Seifert(317.244.1200、内線0220、またはtseifert@scscoatings.com)までお問い合わせください。