パリレン技術のリーダーとして、SCS は長年にわたり、最先端プロジェクトや高度な技術が必要とされるプロジェクト、歴史的に大きな意味のあるプロジェクトに携わり、数々の栄誉を得てまいりました。特にSCSが誇りとしているプロジェクトの一部を、ここにご紹介します。

タイタニック号

1912年4月12日、客船タイタニック号が大西洋横断の処女航海で氷山に衝突。タイタニック号の船体はそのまま約80年間北大西洋の深さ5000フィートもの冷たい海水の中に沈んだままでした。

難破船体の中から雑誌や荷札、乗船切符などの紙製品が見つかった時、回収作業は困難な問題に直面しました。船体から回収した紙製品は、水を含んだ状態から陸上で自然乾燥した状態に戻すにはあまりにももろかったのです。

今後長年にわたってこれらの品々を人々が間近で見ることができるようにパリレンを使って安定化させる方法が見出せないか、SCS に声がかかりました。今日これらの物品はパリレンコーティングにより触ることができるまでの状態に処理され、多くの人々閲覧可能な物となっています。これらは、パリレン技術がなければ海中に失われていたであろう、人類の遺産なのです。

国際宇宙ステーション

カナダ・オンタリオ州にあるNeptec Design Group, Ltd. は、NASAおよび他の12ヶ国の宇宙開発機関による国際宇宙ステーション建設に使用されている宇宙ビジョンシステム (SVS) を構築した会社です。

宇宙ステーションの部品は一連のスペースシャトルミッションで運ばれ、6年間かけて組み立てられました。

SVSでは巨大ロボットアームの制御能力を向上させるために視認性改善が図られており、特殊なエレクトロニクス技術やソフトウェア、グラフィックディスプレイが使用されています。このシステムはシャトルと宇宙ステーション双方に取り付けられたカメラを利用し、視覚的に標的を追跡することで機能しています。

この機能により貨物や部品の動きが精密な三次元画像として得られ、以前のロボットアーム制御よりも遙かに正確な作業を可能にしました。SVSコンセプトが開発される前は宇宙飛行士はビデオカメラの画像と宇宙船の小さな窓からの限られた視界でロボットアームを制御していました。 この新しい画像システムはシャトルによる宇宙ステーション組み立ての各ミッションで使用され、ドッキングや貨物の移動、部品の組立てなどの際にロボットアームをより正確に制御できるようになったのです。

この画像処理システムは国際宇宙ステーションに加え、ジョンソン宇宙センターでの地上トレーニング用としても納入されており、双方にパリレンコーティングが使用されています。

Deep Space の推進力試験

パリレンは、Southwest Research によるエキサイティングな航空宇宙プロジェクトに使用されました。すなわち、Deep Space 1の部品へのコーティングです。この重量350 kg の宇宙船は1998年7月に打ち上げられ、今後の宇宙探索での壮大なミッションをサポートする様々な新テクノロジーの実証を担いました。

このNASAプロジェクトには、深宇宙における真空中でのイオン推進エンジンの実証テストが含まれていました。イオン推進エンジンは、太陽エネルギーを利用して不活性ガスからプラスに帯電した原子を生成・放出することによって駆動します。エンジンのコリメーター (イオン流を揃え制御する装置) はパリレンでコーティングされており、打ち上げ前後の大気圏中での過酷な条件下、そしてミッション終了までの全期間にわたってコリメーター表面を保護しました。イオン推進エンジンは推力がわずか約90 ミリニュートン (0.0227 g重) ですが、この力によって深宇宙でゆっくり着実に加速し、何ヶ月もかけて超高速となり、従来の化学的推進力よりはるかに効率的に作動しました。長さわずか30 cm、燃料供給はわずか65.8 kg しか必要としないこのエンジンは、このようなコストパフォーマンスを求められるロケット事業には最適な物でした。

Deep Space 1のイオンエンジンは1999年9月18日に起動し、それから3ヶ月にわたってほぼ着実に推進し続け、研究対象となる2つの彗星に近づき、その後ミッションを終了しました。

ホロコースト時代の聖書

1994年末、ウィスコンシン州クリアレークのSCSコーティング施設に、何の変哲もない小包が届きました。 この小包には小さな傷んだ本が6冊入っていました。実はこれらは、祈祷書1冊と、ユダヤ教の律法書として知られる旧約聖書の最初の5冊でした。

これらの書物は、ナチスのホロコーストという歴史の中で一旦はばらばらになってしまいましたが、ドイツに住むスイス人医師Dr. Ruppの努力によって守られてきたものです。Dr. Ruppは、第2次世界大戦中にポーランドとドイツのユダヤ人を数多く救った人物でした。

これらの書物は、捕虜となった人々からDr. Rosenblatが託されたものでした。彼はワルシャワのゲットーから逃げ出した後、ベルリンでDr. Rupp に会い、大切に尊厳をもってそれらの書物を取扱い、シナゴーグなどのユダヤ教施設に送り届けてくれるよう依頼しました。

当時、宗教書を持ってドイツを出るのはあまりにも危険な事でした。そこでDr. Ruppは、戦争末期に町から逃れる際、これらの書物を地中に埋めたのです。戦争が終わってベルリンに戻ると、彼は書物を掘り出しました。

年月と歴史的出来事は、この書物に甚大なダメージをもたらしました。SCS は、Yoram Curiel氏 (Dr. Ruppの息子の知人) からこの本の保存について相談を受けました。SCSでは本のコーティングと保存加工を施し、それ以上の破損を食い止めることに成功しました。これらの書籍はその後、ユダヤ教施設に寄贈されたのでした。

IRSの証拠再生

SCSは刑事司法制度をサポートする方法の1つとして、税金不正事例における米国歳入庁 (IRS) のさまざまなプロジェクトに関与しています。

税金不正の事例の中には、重要な証拠や税金記録を秘密裏に燃やしてしまう隠ぺい工作が行われる事があります。SCSのパリレンは燃やされた記録に強化処理を施すのに使用され、証拠として取り調べに利用することを可能にしているのです。

具体的な一例では、IRS科学捜査部門がある税金不正事例で燃やされて炭化した証拠物件を調べるのに苦慮していました。書かれていた文字は識別できましたが、灰のとなった部分は丸まっていて極めてもろい状態でした。

そこで、パリレンコーティングによりこの灰を補強することで、パズルのように再び組み合わせ、1つの文書にすることに成功しました。 個々のパズルはガラスの間に挟まれた状態で取り調べに使用され、その後裁判の重要な証拠として提出されました。

JSTARS監視システム

パリレンコンフォーマルコーティングは、米軍で開発された統合戦術情報伝達システム(JSTARS)の性能向上に大きな貢献をしています。JSTARSは地上の動く標的を対象として高解像度の画像を提供するためのレーダーシステムであり、湾岸戦争やボスニア平和維持活動で成果をあげました。指揮官は非常に広い範囲にわたって、移動する敵戦力に関するタイムリーかつ正確な情報を把握することが可能になりました。

Electromagnetic Sciences, Inc. (ELMG, ジョージア州ノークロス) のJSTARSプログラムマネージャーであるJon Harris氏は「JSTARSの回路基板とマイクロ波変換器を上空の厳しい環境で保護する必要があるため、パリレンコーティングは必須です。特にこのマイクロ波位相変換器はJSTARS監視機の外側に取り付けられるため、機械的衝撃や温度・湿度の大きな変動にさらされます。」と語っています。

ELMGはJSTARSシステムの主要コンポーネントを製造しており、同社ではパリレンを長年にわたって使用しています。Harris氏は「JSTARSマイクロ波位相変換器に役立つコーティングとしてはこれが事実上唯一無二なものです。耐水性、絶縁性を有するピンホールフリーの被覆が得られ、しかも大きな荷重や熱が加わる事もありません。パリレンは保護コーティングの条件を満たす理想の材料です。」 と説明しています。

薄膜でもパリレン独特の保護特性は十分得られますので、複雑なレーダーサブアセンブリの重量をほとんど増加させません。